父親がニンジン嫌いであることをはたち過ぎてから知る

うちの父親はニンジンがきらいだ。

まあ誰しも苦手なものくらいあるだろうけど、なぜかその事実はずっと伏せられてきて、あるとき我々子どもたちが全員大人になったタイミングで「実はおれはニンジンがきらいなんだ」と打ち明けられた。

子どもたちの食卓にニンジンが並んだ時も、うまく父親のメニューにはニンジンが入っていなかったらしい。その事実を聞かされても「あぁ言われてみれば」というような思い当たる節もまったくなく、誰も気づかずここまできたので相当上手に隠してきたのだろう。

それは父親の威厳のためだったのだろうか、それとも子どもたちがニンジンに苦手意識をもたせまいとしたことなのだろうか。理由はわからないけど「父親がニンジン嫌いだということを子どもたちに隠し続ける」という夫婦の連携プレーがここまでされてきたことが微笑ましく、笑った。

たまには記事を振り返ろう【デイリーポータルZ 2018年3〜4月編】

最近デイリーポータルZでも記事の振り返りが記事や動画でよくされていて、制作の裏側とか記事に対するツッコミとか、そういうのを読むのが自分は大変好きなんだなと思いまして。

今まで自分の記事も公開されたらそこがゴールだったのですが、一度振り返ってみるのもいいかもなと感じたのでやってみます。今回は寄稿させてもらっているデイリーポータルZの記事、3〜4月編。それ以上前のやつはもう忘れました。

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2018年3月1日

我々世代ならだいたい小学生の時に通ったであろうプロフィール帳。あれをいまやったら楽しいんじゃないの、という企画。協力いただいたメンバーも豪華で、まぁすげえ楽しかったです。

プロフィール内のおもしろ回答を拾っていくことを中心にするか迷ったのですが、内輪になりそうなので全体的な雰囲気や会話の様子をメインにしたような記憶があります。あれ、やっぱりもうあまり覚えてないな。

楽しいんですが真面目に書いてもらうと1時間くらいはかかるので機会を選ぶぞ、プロフィール帳。

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2018年3月18日

駅弁を作りたかったので、架空の駅の設定から考えた記事。

企画が通ったはいいけれど、地理や地形の知識もない、鉄道も詳しくない、そもそも料理もままならないという、武器が何もない状態でやべえやべえと進めました。妄想一辺倒の記事、どれだけ読んでもらえるかはさておき書くのはとても好きです。

架空の名産品として作った「鴨肉のシラヌヒソースがけ」というメニュー、かなり美味しくできたんですけど、シラヌヒ(という柑橘系の果物)ひとつで500円くらいしたんでまあそりゃうまいよなという変なお金のかけ方をしていました。ちくわぶのからあげは美味しくなかったです。ありゃあむずかしいわ。

最後の駅の写真は確か三鷹駅です。

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2018年4月2日

今までのロケで1位2位を争う楽しさだった記事。

大喜利的要素があるぞということでライターの井上マサキさんとトルーさんという大喜利戦士たちを招いておれの出題した課題に答えてもらいました。キャスティングを褒めたい。

個人的には大好きなんですけどあまり数字は伸びなかったようで、ゲーム系は文字にするのが難しいなとも感じました。映像向きなのかも。いや、おれの力量ですね。

冒頭の茶番がお気に入りです。この数ヶ月後井上さんは『クイズ99人の壁』で100万円を獲得します。

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2018年4月16日

警告色に囲まれると落ち着かないのだろうか、と試して、 警告色に囲まれると落ち着かないなぁと思った記事。タイトルがすべてですね。

本当にあの部屋長時間いられないんですよ。ドキドキするので撮影は休憩しながら進めました、色の効果ってすごい。

はじめて家の中だけで完結させた記事。大きな展開がなくてもどうにかなるものなのか、ということに気づいたのがこの回だった気がします。毒タマゴズシモドキがかわいい。

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2018年4月26日

「外でやらないことを外でやる」という特別企画に声をかけていただき、嬉しくて二つ返事で参加した結果の迷作。

無鉄砲な記事にも挑戦してみよう!という自分の中のテーマのもと発破をかけたは良いものの、本当にまとまらなくてダラッダラ冷や汗かいた記憶があります。ちょっと自分でも読み返すの勇気いりますね。GIF動画にも挑戦してみたかったんです。

指摘されて気づいたんですけど、寿司とかチャーハンとか、おれの記事にはお米が登場しがちです。今のところ3大迷作のうちのひとつ。

 

…という感じで振り返ってみたんですけど、どうでしょうか。これ読める?どうなのか?

ともすれば「自分語り乙ww」なのですが、個人的に振り返るのは良い機会だと思うので評判悪くなかったらたま振り返ってみようと思います。

では、今日はここまで〜。お相手は北向ハナウタでした。

『東京』が歌えない

東京近辺で幼少期を過ごしてきた人間には「東京」をテーマにした歌が作れない、歌えないという。

くるりの『東京』、きのこ帝国の『東京』、チャットモンチーの『東京ハチミツオーケストラ』などなど、各々思い当たる東京の曲があると思う。どれも名曲だ。

埼玉に生まれ神奈川で育ってきた自分にとって、東京とはただのひとつの都市であり、地名であり、”なんか明るい光が当たっているなあ”くらいの場所だ。要は軽いのである。

なんでこんなことを考えているかというと、最近よく峯田和伸の名を目にするからだ。前にこのブログでも触れた和歌山の島育ちの友人が度々銀杏BOYSの『東京』を歌っていて、とても好きだった。そして同時に「おれには歌えないなあ」と思っていたのだ。キーも高いし。

インターネットが活発になり、地方から上京した友人がまわりに増えた。北海道、京都、愛知、福岡、鹿児島。諸々。ふわふわと衛星のように東京近くを漂っていた自分とは違って、自分の意思でここを選んだ人たちだ。彼らは東京の歌を聴くだろうか。何を感じるのだろうか。

そんなことを考えながら銀杏BOYSの『東京』を口ずさんでみたけど薄っぺらい、ただただ薄っぺらいのだ。

梅雨が明けるまで外出ができない

やってしまった。

水に強い革靴を買おう買おうと思いながらグダグダしているうちに、ついに梅雨入りしてしまったのだ。

もう梅雨が明けるまでこの国に晴れが訪れることはない。水に強い靴を持っていないおれはそれまでのあいだ外出ができず、当然靴を買うことなど許されない。八方塞がりだ。

おれの手元には元から水に弱い革靴と、”水に強い!”という触れ込みを信じて買うもわりとすぐ水漏れしだして今やその面影もないゴアテックスの革靴の2足。心もとなすぎる。ヒトカゲイシツブテイワークとおれの革靴たちでハナダジムに挑んだら確実に返り討ちにあうだろう。

ここまで買うのをしぶっていたのにはそれなりの理由もある。足の幅が広く、かつ甲が高いという特徴のためにほとんどの靴が足にあわないのだ。試して試して、これなら履けると思った靴も結局外を歩くと1日でかかとの皮がむける。ましてや革靴なんてとくに生地が硬い。探すのが面倒、泣きながら買う、結局あわない、もう靴を買いたくない、カスミに勝てない、という負のスパイラルなのである。

Twitterでもつぶやいているひとを見かけたけれど、ZOZOスーツは一刻も早く足版を開発してほしい。家にいながらも安心して靴を選ぶことができるのだ。ZOZOからの宅配物ならいつでも受け取れる、おれは梅雨が明けるまで片時も離れず部屋にいるのだ。

 

1歳の男の子とつかまり立ち

その昔子どもの写真スタジオに勤めていたことは前にも書いたが、いろんな家族を毎日見られるのは愉快な経験だった。

いくつか印象的だった出来事の中で、今日は1歳の誕生日だった男の子の話。※ただの思い出話です。

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子ども写真の最たる需要は七五三なのだけど、誕生日の記念に撮るというニーズもなかなかに多い。

誕生日撮影はレプリカのケーキと一緒に撮ったりするのだけど、1歳だとそこにつかまり立ちのポーズが追加される。この時期、足腰がしっかりしてきてつかまり立ちができるようになったり、早い子だと歩き始めたりするのだ。

で、その男の子の撮影である。順調にカットを進めていき、つかまり立ちのポーズになった途端よちよちと歩き始める男の子。おっ成長の早い子だ!かわいいけど写真撮りたいから止まってくれーと顔をにこやかにしながら思ってたんだけど、それを見た母親のテンションが異様に高い。どうしたどうしたと思ったら、

「はじめて歩いた…!!」

男の子、はじめて歩いたらしい。生まれて初めての一歩目が写真スタジオだったのだ。めでたい瞬間過ぎて笑ってしまった。

自分の子ども以外の第一歩目を見る瞬間なんてそうそうないだろうな、と感じた貴重な体験だったので強く記憶に残っている。その瞬間ちょうど目を逸らしてたその子の父親が、母親から責められていた。

運動音痴のひと20人でフットサル大会をしたときの話

イニエスタJリーグ入りでにわかにサッカー界が沸き立っている。

サッカーでふと思い出した出来事がある。それが”運動音痴限定フットサル大会”のことだ。

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歴史的なその出来事を語る前に”サッカーと北向ハナウタ”について触れておく。

今でも一番好きなスポーツというとサッカーを挙げるけれど、おれのサッカーの歴史は凄惨なものである。プレイ経歴をまとめると、

・小学校1〜2年(引越しにより退部)
・小学校5年生(なじめず退部)
・中学校1年生(つらくて退部)

ご覧の通りとにかく退部を続けてきたのだ。これだけ退部してきた理由はだいたい3つくらいあって、まず第一に、サッカー部にいる明るい男たちに馴染めない。声が大きくて怖い。第二にサッカーがヘタだ。全然うまくないのだ。そして第三に根性がない。こんな三拍子が揃ったらそりゃあやめるだろう。何度だってやめる。

それでもサッカーは好きだったので大学に入っても性懲りも無くサッカーサークルへ見学に行っては入部せず、社会人になってフットサルに呼ばれるも一度呼ばれたら次回は声がかからない、というような日々だった。

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 そんなある日、友人と「とにかく運動をしていないのでやばい」という話になった。そこでひらめいたのが冒頭の”運動音痴限定フットサル大会”だ。

みんな運動音痴だったらのびのびやれるのではないか? そう思った我々がTwitterで声をかけるとあれよあれよと20人が集まった。みんな本当は運動をしたかったのだ!

もちろん運動ができそうな人は丁重に断った。我々が萎縮してしまうからだ。「応援だけしにいってもいいですか?」という相談も断った。違うんだ、普段応援側にまわっているひとにこそ参加してほしいんじゃないか。それに客観視するひとが入ると萎縮してしまう。我々はすぐ萎縮するのだ。

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当日配ったレジュメ

外野から見えないよう完全個室のコートをレンタルして望んだ当日。結果から言うと大会は本当に楽しかった。みんな本当にヘタだった。すごいヘタだった。でもそれを笑う人もいないし、遠慮する人もいない。みんな精一杯に本気でボールを追いかけたのだ。

ドリブルで直進しかできない男がひたすら直進し、こぼれ球を女の子がシュートし、バーに跳ね返って上がったボールを別の女の子が必死にヘディングするのだ。こんな光景見たことなくて少し感動すら覚えた。

そうだ、我々は運動が嫌いなんじゃない。とにかく運動のうまいキャーキャーしたひとに囲まれて遠慮しながらするそれが苦手なだけだったんだ。

「また絶対やろうね」という話をみんなでして、それから一度も開催されずに3年経ってしまった。たぶんまだみんな筋肉痛が治っていないのだ。

I return without seeing 花粉

スギ花粉が落ち着いたー!と、勢いよくマスクを引きちぎりアレグラを床にぶちまけた途端に次の敵が押し寄せてきた。ヒノキ花粉の襲来である。


なんかスギと違う。目が痛い。”かゆい”とかではなく目玉を小さな針でチクチクずっと刺されているような感覚だ。油断してすみませんでした、と床のアレグラを拾い集めたのが一昨日のこと。皆様いかがお過ごしでしょうか。

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今年の花粉症界隈で話題になったアイテムがある。それが「花粉を水に変えるマスク」だ。大々的に広告を打ち、キャッチ―な商品名もあって花粉症でなくともご存知の方はいると思う。

花粉を水に変える。

果たしてそんなことが可能なのだろうか。マスクをこの時期の正装としている我々花粉族は、よくわからないけれどソワソワしていた。
「花粉が…科学の力によって水に変わるらしい…」
「高価だけど、科学の力によって何日も使っていいらしい…」
会話がフワフワしている。”科学の力”という万能な言葉にいいように振り回されている。

とは言え結構高価なマスク。気になりながらも自分では購入できないでいたのだけど、ひょんなことからこれを手に入れることができた。同じく花粉族の会社の上司がプレゼントしてくれたのだ。

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しかも一番強力なタイプ

会社でこのマスクのことをあちこちに吹聴していたのが良かった。4枚4,000円(税抜)。1枚あたり1,000円!1枚で1,000円のものなんてこの世にあるだろうか、おれは1,000円札しか知らない。

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で、まぁ使った結果なのだけど正直よくわからなかった。効いているかもしれないし、でも目はかゆいままだ。確実なのは”2~3日もすればマスクが毛羽立って使い物にならなくなる”という事実だけ。これは科学の力ではどうにもならないらしい。

このマスクについて擁護するつもりもないし、貶すつもりもない。だから”そのマスク眉唾ですよ”みたいな話にも興味はない。当たらなくてもワクワクする宝くじのように、”花粉を水に変える”という言葉は我々を確実にワクワクさせたのだ。
そうやって前に進んだり後退したりしながらいつかすべてが解決すればいいと思う。

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あと、どうしても「花粉を見ずに帰るマスク」と変換される。googleでさえ理解ができていないのだ。