上野動物園を外から覗いた、の話

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 よーく見ると白黒のサルのお尻が見える

 

動物園を外から眺めよう

動物園が好きだ。中でも上野動物園はアクセスも良くメジャーな動物が揃っているため、気楽に動物園を味わえる素敵なスポットだ。そんな上野の広大な敷地を歩いていた時にふと思ったことがある。

 

「園内に入らなくても、外から動物たちが見えるんじゃないか?」

 

園の中からでも動物園の外の様子が洩れ見える。ならば裏を返せば園の外周を練り歩けば“洩れ動物”の一匹や二匹と巡り会えるのではないか。これはそんな思いから上野動物園を外から覗いた話である。

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上野動物園正門。入り口から入るひとが多い

 

同志を募り3人で集合したのは昼過ぎの上野駅。1月とは思えない暖かさはまさに動物園日和だ。人の流れに沿い正門へ向かう。ただ今日ばかりは入場口に従順な我々ではない。チケット売り場に背を向け右回りに出発する。待ってろ、まだ見ぬ動物たち。

 

見える!鳥だ!

中はなんとなく見えそうだ。鳥がいそうな檻(地図に表記がなく本当かはわからない)。今はパンダの展示の裏側ではないか(推測だ)。家で印刷してきた上野動物園周辺の地図とGoogle Mapを頼りに位置を確かめながら進む。iPhoneによると現在地はゴリラから車で3分らしい。ゴリラまで3分。

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ゴリラまで3分

 

まっすぐ進むと明らかにひらけたポイントにぶつかった。旧正門である。すごい、鳥が!鳥がすごい見える!はしゃぐ一同。ケージによってはむしろ外から眺めたほうが距離が近いぐらいで一気にテンションが高まる。慌てて双眼鏡を取り出す、双眼鏡は動物園観察の必須アイテムだ。

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コシアカキジ、シラコバト、アカガシラバトなどが見えるらしい。すごい嬉しそう

 

ちなみにカワウソのブースも見えたが人が邪魔で動物自体は見えなかった。チケットを買った人が優先されるシステムらしい。

 

東園をぐいぐい進む

引き続き歩く、歩く。背伸びして、ガードレールに足をかけて塀の上の様子を探る。柵と柵の間をかいくぐる。目を凝らしフェンスの先を見やる。ゴリラが見えるかも!と門のスキマを覗くもおばさんと目があうだけだ。

 

哺乳類となかなか出会えない我々にもついに転機が訪れる。動物園に程近い建物屋上の奥の奥に楽園を見つけたのだ。園内を一望できる絶好の立地、誰にも邪魔されぬ静けさ。その楽園で3人はトラを見た。トラを見たのだ。今思い返してもこの体験だけでも1日外を練り歩く価値があったと思う(写真は割愛)。

 

“洩れ動物“はいるのだ!興奮冷めやらぬ我々は尚も進む。ところで外周を回るとネコや鳩を良く見かける。疲れと興奮で感覚が麻痺してしまったのだと思う、あとあと写真を見返すとネコと鳩の写真がやたら多い。何度見てもただのネコと鳥だ。

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ネコだ

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鳩だ

 

ネコと鳩はさておき、動物園外回り初心者の方々のために難易度の低いおすすめスポットを紹介したい。それが「子ども動物園の裏側」だ。カピバラ、ヤギ、ポニーといった馴染み深い動物たちを至近距離で見ることができる。

 

とくにウマは大きくて興奮する。こんなに大きな動物を見せてくれてありがとう、という感謝の気持ちで心がいっぱいになるのだ。白いウマも見えるし茶色いウマも見えるぞ(ただし立ち止まると通行人に迷惑なので流し見に留めること)。

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こんなに見えてしまって…ウマよ

 

西園は動物園の裏側がよく見える

東西に分かれた園内。西園は敷地の半分を池が占め、動物の数も少ない。比較的地味な西園はしかし外から眺めるとなかなかに興味深いエリアだった。デビュー前の飼育段階であろう鳥たちを集めたケージ、電力施設、爬虫類館横に水の濾過施設、動物搬入用の通用口。文字通り動物園の裏側だ。

 

普段内側を歩いていると気づかないけれど動物園を運営していくにはたくさんの備えやそれに関わる人たちがいるのだと実感することができた。

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デビュー待ちの鳥。おそらく普通に入場するとこの鳥たちは見えない

 

西園でも鳥は相変わらず見放題だし、それなりのサルも見えた(冒頭に写真を記載)。どうやら鳥とサルなら見せてもいいと思われている。ペリカンはいつでも脱走できる放し飼いだ。なんだんだ。

 

洩れ動物は愛おしい

そのままぐるっと南下し、上野の外周歩きは道程2時間半、11,000歩ほどで終幕した。3人は程よい疲労感と、それを上回る確かな充足感で満たされていた。自分の足で探し出し隙間から出会えた“洩れ動物”たちは、普段お膳立てされて容易に見られるそれらより何十倍も愛おしかった。

 

ほんの思いつきだった動物園観察は、今まで気づかなかった動物園の様々な側面を知ることのできた予想以上のよい旅となった。

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入場料は浮いたけどその足でアメ横へ行き盛大に宴を開いてしまった様子

 

※この記事は別冊ZOO(2016年5月5日刊行)へ寄稿したものを加筆、修正したものです