父親がニンジン嫌いであることをはたち過ぎてから知る

うちの父親はニンジンがきらいだ。

まあ誰しも苦手なものくらいあるだろうけど、なぜかその事実はずっと伏せられてきて、あるとき我々子どもたちが全員大人になったタイミングで「実はおれはニンジンがきらいなんだ」と打ち明けられた。

子どもたちの食卓にニンジンが並んだ時も、うまく父親のメニューにはニンジンが入っていなかったらしい。その事実を聞かされても「あぁ言われてみれば」というような思い当たる節もまったくなく、誰も気づかずここまできたので相当上手に隠してきたのだろう。

それは父親の威厳のためだったのだろうか、それとも子どもたちがニンジンに苦手意識をもたせまいとしたことなのだろうか。理由はわからないけど「父親がニンジン嫌いだということを子どもたちに隠し続ける」という夫婦の連携プレーがここまでされてきたことが微笑ましく、笑った。