玉子豆腐にカラメルソースをかけるとプリンになるのでは

いつの日か、茶碗蒸しを食べながら「これ、かなりプリンだな」と思った。
卵がいい具合に固められており、それを器からスプーンですくって食べる。うん、プリンだ。でもそうするとこの銀杏が余計だな。鶏肉もいらないし、しいたけやかまぼこだってジャマをしてくる。

もっとこう、余計な具の入っていないシンプルな茶碗蒸しなら…そう思いを巡らせてハッとする。玉子豆腐じゃないか。玉子豆腐は、プリンだ。

プリンと玉子豆腐、イヌとニホンオオカミ

言うが早いか、真夏のスーパーマーケットに駆け込んで玉子豆腐を手に入れてきた。午前中でもうだるような、セミも鳴き止むほどの暑さだ。

玉子豆腐、子どもの頃好きだったんだ。食卓に並ぶと少し浮かれる、”あたり”のおかずである。付属の金色のたれも好きだったけど、今日はそれをカラメルソースに変え、スイーツへとお色直しをしよう。

子どもが浮かれる、付属のたれで食べる、という点でもプリンと玉子豆腐は類似している。イヌとニホンオオカミはルーツがギリギリまで同じだったと言われる。祖先のオオカミのうち、人間に家畜化されたものがイヌ、野生のままでいたものがニホンオオカミになったそうだ。

なんの話だっけ。

そう、だから、プリンと玉子豆腐は祖先が同じでもおかしくないんじゃ、という話。

カラメルソースを作ろう

玉子豆腐こそ購入したけれど、カラメルソースは家にあるもので用意できる。砂糖とその半量の水を鍋(フライパンだけど、鍋と呼ぶ)に入れ、弱火で煮詰めていく。

この時点では掻き混ぜないこと。鍋を揺らしながらしばらく様子を見ているとだんだんと泡立ち、粘度を帯びていく。

泡が小さくなると、やがて少しずつお馴染みのカラメル色へと変化していく。飴のような甘い匂いが立ちこめる。これ、これ。筆者は苦めのソースが好きなのでしっかりめに色が濃くなるまで火を通す。ちょっと目を離すと焦げてしまうので要注意だ。

火を止めたら、お湯を少量足す。

カラメルソースが固まってしまうのは水分が足りないから。最後にお湯を足すことで調整する。ここでお湯ではなく水を入れてしまうと温度差で固まってしまっていけない。

お湯が飛び跳ねるので蓋などで防御しながら足すのが望ましい。しかし筆者の右手は撮影用のiPhoneで塞がっている。散るのが分かっててお湯を注ぐ。散る。うわー。何かを犠牲にしなければ記事は書けないのだ。

というわけで好きな小皿に玉子豆腐を乗せ、

カラメルソースをかけたら完成!玉子豆腐プリンだ。

あ、筆者です。食べます。

スプーンでひとすくいすると、ほとんどプリン…いや、実際はちょっと角が立っているのがわかるだろうか。玉子豆腐がカラメルソースの隙間から顔を出す。まだ自我と戦っているのだ。

しかしその微かな玉子豆腐としての自我も、こうして口に放り込んで仕舞えば…

 

 

うーん?

 

 

甘い玉子豆腐だ。

 

この世に未解決の定理が増えた

結論から言うとプリンにはならなかった。出汁の風味やら塩味(えんみ)などがカラメルソースとがっぷり四つとなり、1+1=0.7くらいの食べ物になった印象である。決してまずいものでもない。でも、でもである。そうかぁ。

とはいえ、出汁を効かせたアイスだってこの世にはある。しょっぱさと甘みは十分に共存できる。今回はゴールまで辿りつかなかったけれど、きっとどこかで交わる世界だと思うのだ。甘みを抑えれば?もしくは玉子豆腐を一から作ることで調整できる部分も大いにあるだろう。

すぐに答えの出ない問いがあっても良いのだ。
数学の世界には「ABC予想」や「ホッジ予想」などまだ解決されていない数論が多くあると言う。そう、「プリン玉子豆腐予想」は今日、世界へと投げかけられた命題だ。

ただし、江ノ島杯の締切に間に合わなくなるため、この未解決問題は未解決のまま提出しようと思う。

 

<この記事は江ノ島杯に向けて執筆した記事です>