宝くじ売り場のおばさんの一生

宝くじ売り場のおばさんは宝くじ売り場から一歩も外へ出ずにその一生を過ごします。今日はそんな彼女たちの知られざる生態をご紹介いたします。

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宝くじ売り場の室内は一年中を通して高温多湿であり、宝くじ売り場のおばさんにとって適した環境と言えます。そのため環境の変化に弱い彼女たちは冒頭で述べた通り一生をこの売り場の中で過ごします。

では彼女たちはどのように繁殖をしていくのでしょうか。

 

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その答えは彼女たちの配る”宝くじ”にあります。

皆さんは宝くじを購入した時に裏面を読んだことはありますか?裏面に住所や名前を書く欄が設けられていることもご存知ない方も多いかと思います。しかしそれよりもっと知られていないことがあります。それが、宝くじの裏面は宝くじ売り場のおばさんの産卵場所だ、ということです。今お手元に宝くじをお持ちの方はぜひひっくり返してみてください。

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彼女たちは無性生殖によって卵を産む、という一風変わった生殖方法を持つことが知られています。宝くじの裏に産み付けられた卵はやがて人々の手によって広範囲に移動し、他の宝くじ売り場に渡って孵化します。

ただこの卵はとても乾燥に弱く、鳥たちの格好の餌になること、換金されずそのまま机の中で忘れられてしまうチケットも多いことなど、その多くは孵化されず死に絶えてしまいます。また、”購入場所と異なる宝くじ売り場”でないと正常に育たないという事実も最近の研究によって明らかになりました(Newtonより)。

そのため彼女たちは3億もの卵を1度に産卵します。それでも生殖期まで育つ確率は実に「0.0000001%」。ちょうど宝くじの1等が当たる確率と同じと言われています。

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こうして運良く宝くじ売り場で孵化した宝くじ売り場のおばさんは、はずれの宝くじを食べることで大きく成長していきます。尚、彼女たちは幼少期から完全に成熟するまでほとんどその容姿が変わりません。生まれつきおばさんとも捉えられますが、生物学的には幼形成熟、いわゆるネオテニーの特徴を持っていると言われています。

時期でいうとサマージャンボが終わる頃には成熟し、老衰した元の宿主に変わって宝くじをさばき始めます。この頃には彼女たちは一切の食事を摂らなくなります。次の世代のために宝くじを室内に溜め、くじの裏面に産卵し人々へ頒布します。よりたくさんの人の手に渡るよう、彼女たちは「この店で1億円が当たりました」というのぼりや「本日大安」と書かれたPOPを目につくよう配置し、時には行列を作るほどの人だかりを生み出します。

そうして年末ジャンボのCMが始まる頃にはまた卵が孵化し、この循環で1年で繰り返されています。

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いかがでしたでしょうか。

宝くじはその収益が様々な公共事業に還元されていますが、それと同時に彼女たちの生態系を守っていたのです。サマージャンボ宝くじは7月から発売が開始されます。当選に向け血眼になるのも良いですが、ぜひ彼女たちの生き様にも注目し、一言「お疲れ様です」と声をかけてみてはいかがでしょうか。

 

 

拝啓 グラハム・ベル

先週話したiPhoneの不具合、めっちゃきれいに画面を拭いたら良くなった。アナログな理由だったぽい。

ほんの一時的な携帯電話の不調でも日常生活を確実に鈍らせ、もうこの機械なしでは満足に人間として暮らすことが出来ないなと改めて感じた。調べごとをするにも道を探すにも何かを買うにもこの平べったい四角い機械がついてまわるのだ。 

昔から面白いなーと思っていることがあって、電器店の屋号にヨドバシにせよビックにせよ”カメラ”がついている、ということなのだけど、その昔はカメラが商用の機器の中でも花形だったのかなという、そういった跡が垣間見えて好きなのだ。ところがどうだろう、主役を張っていたはずのカメラはもうすっかり携帯電話の一部に組み込まれてしまった。iPhoneの背面から少しはみ出たカメラレンズは彼らのせめてもの抵抗だろう。

しばらくは”電話に何を足すか”が開発者の争点になり、もうあと数十年は電話にとってかわる新しい何かは生まれないと思う。電話が生まれてから140年、遠くの人間の声を聴くこの機械が人々の生活の中心にどっかりと居座ることを誰が想像できたろうか。

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2014年末、世界人口は72億人。携帯の契約台数は75億とついに人間より携帯電話の多い世界となった。

iPhone7なんていらないよ

iPhoneの調子が悪い。明確に悪い。

具体的に言うとタップに反応しなくなってきてしまった。昔はあんなに嬉しそうに反応してくれたのに、おれの嫌いなところがあったら治すから言ってほしい。

文字を打とうにも度々シカトされるので文章も億劫になる。先ほどは躍起になって連打したらたまたま顔文字のボタンだけ押せてしまい、渾身の「^_^」が打ち込まれてしまった。「バストイレ別^_^」じゃないんだよ、どういった感情表現なんだ、おれのラッキーフリックを返してくれ。

原因として思い当たる節はひとつあって、最近「iPhone7がほしい」と口走ってしまったのが引き金だったんじゃないかと睨んでいる。こういう、言霊というか、モノの寿命に対して信心めいたものがどうやら自分のなかにあるらしい。

前に軽い気持ちで新しい眼鏡を買ったら、それまで元気にしていた古い眼鏡がその翌日静かに真ん中で二つに割れているのを発見したことがある。真ん中で割れるものなんてパピコしか知らなかった。傷ひとつない新入りを見て、あぁ、これでおれも安心して引退できるな、今度はお前がハナウタの目となるんだよ、と穏やかな笑顔で二つになったんだと思う。いい眼鏡だった。

問題はお手元のiPhone6である。おれはなにも傷ひとつない新入りを手に入れたわけでもなく、ましてや2年契約をあと5ヶ月も残している。もう少し一緒に頑張ろう、防水加工じゃなくていいからさ、そうさ水の中になんて入らなければいい。大丈夫、いいよ、お支払いは現金さ。

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おばあちゃんと多分もういない犬

先日、道端で大きなケージを重そうに運ぶおばあちゃんに出会った。

あまりに足取りが不安定だったので思わずよろしければお持ちしましょうか、と声をかけた。「ありがとう、じゃあ大きな通りまでお願いしようかしら」大通りまで出ればタクシーを捕まえるとのこと、確かにこの細い路地ではタクシーは見つかりそうになかった。

ケージの中にいたのは薄い灰色に少し白の混じった小型犬だった。おでかけですか、おばあちゃんに訊くと動物病院に行くのだという。少し間をおいて彼女は話を続けた。不治の病らしい。もう何度も医者に通ったがこれ以上は良くならない、食欲も体力も日に日に衰えていくし…今日動物病院へ行くのは、安楽死をさせるためだそうだ。

ああ、それは…突然の安楽死という響きにうまく言葉が出せなかった。でもおそらく自分が何か気休めのような声をかけるのは違うのではないかと思い、犬とおばあちゃんの目が合うよう、ケージを高い位置で持ち直した。

それから大通りに出るまでおばあちゃんは思い出話を見ず知らずの自分にいろいろ聞かせてくれた。おすわりが得意だったこと。見た目は可愛らしいけどオスだということ。里子を預かったもので、兄弟たちは仙台にいるのだということ。たくさんかわいがってたくさん遊んでたくさん贅沢においしいものをあげたからきっと幸せだったと思うのよ、とおばあちゃんは努めて明るく話していた。

見通しのいい通りまで歩き、おばあちゃんと犬と別れた。もし自分と会わなかったら彼女はどんな思いでケージを持ち運んでいたのだろう。もしかしたら自分なんかが良かれと運んだりせず、彼の重さを実感しながら歩きたかったのではないだろうか。正解があるのかもわからないことをぐるぐると考えた。 

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ゾゾタウンが流行っている理由を考える

ゾゾタウンなんて絶対に使わないぞ。

頑なにそう思っていたのだけどもうこの半年で3、4度利用している。いつのまにかゾゾの町の住人になっていた。住民票を移した方がいいかもしれない。

今まで利用してこなかった理由は明解で、「だって試着しなきゃ買うの怖くない?」だ。おそらくゾゾタウンに住民票を移していない方々はこの思いがあると思う。

ゾゾの町を利用するようになったメリットはいくつかあるが、最たる理由は”買い物は面倒くさい”ということに改めて気づいてしまった点だと思う。街まで出るのが面倒だ、服を探して何店舗も歩き回るのが面倒だ、店員から話しかけられるのも面倒だ。服屋に着ていく服がない、とはよく言ったもので、服がないから服屋に来たわけであり、あまりこちらの全身をしっかりと見ないでほしいのだ。ゾゾ町なら最悪全裸でも服が買える。全裸で待ち、到着した服を着ればいいのだ。

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実際のところはわからないけど、おれの思うゾゾ町の利用層をまとめてみた。”真のオシャレ層”はやっぱりオシャレな店に行くのだと思う。着てみないとシルエットもわからない、手に取らないと素材や色もわからない。そもそも買い物自体が好きなので店に通う。一方で”真のどうでもいい層”がある。着られればいいので適当な店に入り適当に買う(この際「最近はユニクロもオシャレなの出てるよ」などの意見は置いておく)。問題は”ちょっとオシャレしたい層”だったのだ。みんなと服が丸かぶりするのは避けたい。でもちょっと面倒くさい。オシャレ意欲と面倒な気持ちが複雑に入り混じったとき、ひとはある町にたどり着くのだ。

ようこそゾゾタウン。

意外と「このブランドならこのサイズでどうにかなる」を把握しておけば失敗も少ない。そもそも店で買うより安く買えるので失敗のダメージも少ない。少しずつコツをつかみ”ゾゾ筋(ぞぞきん-ゾゾタウンを利用する用の筋肉)”がついていく。そのようにしてひとは住民票を移していくのだと思う。オシャレに少し疲れたあなたも一度利用してみるのも手だと思う。もう一度言おう。

Welcome to ようこそゾゾタウン。

金沢動物園に行こう。

先日上野動物園の記事で賞(※)をいただいたばかりで恐縮ですが、実は他に一番好きな動物園がありまして、今日はその話です。

突然ですが、皆さんは動物園に何を求めますか?珍しい動物がいる、イベントが楽しい、見やすい、コスパがいい、人それぞれかと思います。その中で自分が好きな動物園の条件が”動物も人間も過ごしやすいか”ということです。

えーっと何言ってるかよくわからないと思うのですが、やっぱり観客からすると見やすさ、動物との近さって大事じゃないですか。ただ、単純に動物と人間との距離を近づけようとすると動物の生活エリアが狭くなる。見ていてちょっと息苦しく悲しい気持ちになります。それならばと動物の住処を広くすると今度は動物が遠くに離れてしまい見づらくなる。ジレンマです。

そのあたりの見せ方がいいなーと思うのが、おれの一番好きな動物園、横浜市立金沢動物園

この動物園、”ツノのある動物”に特化しているというコンセプトの時点でかなり面白いのですが、動物の特性を活かした見せ方がされていて、それが好きなんです。

例えばオオツノヒツジとプロングホーンの展示。オオツノヒツジって高所で暮らす動物なので、普通に展示させると観客が高所にいる彼らを見上げる形になるんですが、ここだといきなり目の前にオオツノヒツジがバーンと現れます。いきなりです。

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何故ここにオオツノヒツジ!?となるのですが、冷静に考えるとここにたどり着くまでに少しづつ山を登っていたんですね。f:id:kitamuki:20170502124638j:plain

実際の写真だとこういった具合。この下にはずっと岩山が広がっています。オオツノヒツジの高所へ登る習性を鑑みて、彼らが自然と集まる場所に、人間の動線が来るようにしているんです。この配置設計が素敵。

で、オオツノヒツジ良かったなーと余韻に浸りながら坂を右に曲がりながら下っていくと、いるんですよ、下りたところにプロングホーンが。

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いたー!同じ岩山の下の方に、平地で暮らすプロングホーンがいるわけです。当然山を見上げるとさっき目の前にいたオオツノヒツジが断崖絶壁の上で暮らしている。めちゃくちゃ憎い演出。あとこの動物園はフェンスがほとんど無いのでとても見やすく動物を近くに感じることができます。フェンスの有無、思っている以上に臨場感に差が出ます。

まあここまで偉そうに話してこの間はじめて行ったばかりなのですが、他にもカンガルーのウォークスルー、休憩室で見られるワライカワセミ、儲ける気の更々ない園内での食事や不安になるなかよしトンネル、適度な混み具合(大事)、隣接した公園にある全長100mの滑り台など…。魅力を挙げるとキリがないのですが、とにかく動物の過ごしやすさを第一にした上で観客にも楽しんでもらおうという心遣いが感じられておれはこの動物園がとても好きです。

少し辺鄙なところにありますが、品川から最寄りの金沢文庫駅まで一本ですし(そこからバスに乗るけど)ゴールデンウィーク行くところに迷った際はいかがですか、金沢動物園

 

※追記。

この度、当ブログの「上野動物園を外から覗いた、の話」がデイリーポータルZの新人賞で最優秀賞をいただきました!ずっと憧れていたwebサイトだったので本当に嬉しいです。

portal.nifty.com

kitamuki.hateblo.jp

やー…なんか、ありがとうございます。まだ実感無いですがこれからもよろしくお願いします(ちなみに金沢動物園は外から覗けるタイプの動物園ではないです)。

魔窟についての手記

東と西と南はあるのに北がないものはなーんだ?

こんばんは、そんな訳で今日のテーマは東京のダンジョン、新宿駅です。東京になじみの薄い方には申し訳ないですが、そうと決めたから。

新宿駅で迷子になったことのない方はいないかと思います。とにかく路線が多い、人が多い、出口が多い、どん詰まりが多い、縦に横に入り組んだその構造はまさに現代の魔窟だ。

で、なんでこんなにも迷うのだろうと突き詰めた結論が冒頭の「東と西と南はあるのに北がないものなーんだ?」。そう、この駅には出口がたくさんあるのに北口というものが存在しない。調べられる限りで出口を列挙してみよう。

 

東:JR東口、JR中央東口

西:JR西口、JR中央西口、小田急地下西口、小田急地上西口、京王西口、

南:JR南口、JR東南口、JR新南改札(旧・新南口)、小田急南口

他:ミライナタワー改札、甲州街道改札(旧・サザンテラス口)、ルミネ口、新都心口、京王新線口、京王百貨店口、広場口、臨時口、大江戸線の出口が3つくらい

 

こんなにたくさん口があるもの他にないでしょう。調べきれていないだけで多分もっと口はある、我々がまばたきをしている間にもどこかで人が生まれ、人が死に、新宿駅には口が増えている。

改めて並べても不自然なまでに北口が見当たらない。それは迷う訳だ、ぼくらは新宿駅を歩くとき南と東と西しか無いコンパスを渡されているようなものなのだ。

なぜここまで北口を排除する…不自然なまでに…?おれはハッとする。もしかして元々は存在していた北口が、なんらかの理由で消されたとしたら…?息を飲む、南口コンコースを駆け、通勤ラッシュの人並みをかいくぐり、アルプス広場を通り過ぎて、そして辿りつく。この色あせて埃をかぶった無人の改札は…?おれの身体は己の胸の高鳴る音で充満し、背後の不穏な足音に気付かないでいた。鈍痛。薄れゆく記憶の中で濡羽色の外套に身を包んだ男二人の薄い笑顔を見た、北口、キミは…